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Solitude(小説)(イビー) 

遅くなってすみません。
今日からバンホールNPCです。
まずは、イビーのお話です。

鏡の前に立ち、幼く青白い顔の上にお気に入りの帽子をかぶせた。
私の毎日はいつもその行動から始まる。
「……」
映った容姿―この年頃の子供にしてはかなり細く、病的である。
私はそんな自分が、あまり好きではなかった―


「イビー、また出かけるのかい?」
家を出て、降り注ぐ日差しの中に身を置くとすぐに呼び止められた。
スーツを身に着けている男性―パパだ。
「うん」
私がそう言うと、パパは難しい顔をして、
「今日は陽射しも強いし、家の中にいた方が…」
そう言う。
「つまらないもの」
もう引き篭もって本を読むのは飽きたのだ。
「そうか…体調が悪くなったらすぐに人を呼ぶんだよ?」
「わかった。行って来るねパパ」
手を振ってその場を去る。


人々の活気と鉄の匂いが辺りに広がっている中を、ゆっくりとした足取りで進んだ。
この町―バンホールは製錬、鍛冶がとても盛んである。
エイルリフ王国中から、その道を極めようとする者たちが集まってくるのだ。
私は少し前にこことは別の都市、イメンマハからパパの仕事の関係で移住してきた。
町の雰囲気は『動』と『静』―殆ど逆のような感じである。
「…ケホッ、ケホッ」
体が弱いせいか、それとも辺りを舞うほこりのせいか、喉の奥から咳が出た。
その場に立ち止まり胸を抑える。
―苦しい。
波が去り、少し落ち着いた所でまた歩き出す。
周りの人々が少し心配そうな目で、こちらを見つめている。
最初はすぐに駆け寄ってきてくれたのだが、私がそれを拒絶してきたせいで最近はあまり人が寄ってこなくなった。
だがこれでいいのだ、私は人と接するのが苦手だし人の優しさなんて信じられない。
優しくしてくれるのは、私が病弱だからでしょ?
そんな事を考えてしまう。
と、
「イビー!」
「……」
まだ成長しきってない少し高い声が、私を呼び止めた。
振り向くと少し汚れた作業着に身をつつみ、頭にバンダナを巻いた少年が走り寄って来る。
名はショーンと言う。この町で唯一私とと同じ位の歳の子供だ。
「や、やぁオハヨウ。今日も良い天気だね」
「そうね」
「さっき咳してたみたいだけど、大丈夫かい?」
「別に平気だわ。…じゃ」
相手の心配を無視する。
これ以上話す事は無いので、去ろうとした。
「あぁっ!待って待って」
「…なに?」
「いや、もうちょっとお話でもしたいかなーって…」
「私はしたくないわ」
「うぅ…」
目の前で頭を抱え呻きだす。
この男の子が、私に好意を抱いてるのは気づいていた。
だけど、その気持ちに答える気にはならないのだ。
どうせ見ているのは見かけだけ、私の事なんて何も理解なんてしていない。
このまま素っ気無い態度をとっていれば、すぐに私への興味なんて無くなるだろう。
「コラァッ!ショーン何やってる!!」
「うわヤバ、親方だ…」
大声が響いてきた方を見やると、大きな体のおじさんが腕を組んで睨んでいた。
「行かなくていいの?」
「…はぁ、じゃあまたねイビー」
「…」
ため息をついたショーンは、来たときより更に速い速度で走り去っていく。
―彼の『またね』に何も答えない自分が少し嫌だった。



ゆっくり風が吹く中、道を上に歩いて行き、いつもの場所に辿りつく。
町の入り口の一画、1本の木が生えている―私のお気に入りの場所だ。
木によりかかり、下の方を眺めると町の様子が伺えた。
―賑やかでとても楽しそう。
その中に入っていく勇気もない、だがここから見える風景を見ているだけでこちらも元気になるような気がした。
ショーンも下で動き回っている…あ、転んだ。
「ふふ」
おかしくてつい口から笑みが漏れる。
ずっと目を凝らしているのに疲れ、木に頭を預け目を瞑った。
涼しい木陰の下、少しずつ意識が薄くなっていって…



遠くから声が聞こえる。
―ママ!ママ!
―ごめんね、イビー…ママもう行かなきゃ駄目みたい
―いやぁ!
―あなた…イビーを頼むわね……
―…あぁ、大丈夫だ。
―イビー…大好き…よ
―ママ!?
―……
―ママァァァァ!
泣き叫んでるのは、小さい私だった…



「ぅ…」
目が、覚める。
久しぶりに『あの時』の夢を見た。
とても、とても、悲しい思い出。
思えばあの頃から私は病弱になり、他人との接触も避けるようになった気がする。
精神的にも肉体的にも、病的になってしまったのか…
空を見ると日は傾き始め、イウェカが顔を覗かせていた。
帰ろう、そう思い立ち上がり、歩き出そうと―
「あっ…」
足元にあった石に気づかず、転んでしまう。
全然ショーンの事笑えないわ…
「ん…」
鈍い痛みにスカートをめくると膝から血が出ていた。
「いた…い…」
こんなのたいした怪我でもない、さぁ、早く立ち上がって…
「…ひ……ぅ」
喉から勝手にかすれた声が漏れる。
そして目からは涙が―
あんな夢見たからだ。この程度の事で私の精神はもう耐えられなくなってしまった。

誰もいない、私は独り

「誰か……ママぁ…ぅあ…」
寂しい、助けて欲しい。
「イビー!?」
「っく……ショー、ン?」
私の声が天に届いたのだろうか、『誰か』が来てくれた。
「どうしたんだい!?」
「な、なんでも、ない」
必死に泣き止もうとするが、一度開いた蓋は中々閉まらず、涙を流し続ける。
「何でも無いわけないでしょ!…ひざ擦り剥いてるじゃないか」
傷を見つけられてしまった。
「んと…これ、巻くよ。大丈夫、使ってないから綺麗だよ」
ショーンはポケットから白いハンドタオルを取り出すと、私の膝に巻き始める。
「……」
真剣に私に応急手当してくれる姿は少し、かっこいいと思ってしまった。
「よし、これで大丈夫だ。後でちゃんと消毒とかした方が良いよ…イビー?」
「……ん」
少しぼうっとしていたようだ。
「立てる?」
「それくらい…あれ?」
地面に手をつき、立ち上がろうとするが、何故か足に力が入らなかった。
「はい」
ショーンが膝をつき、背をこちらに向けている。
「ぇ…」
「家までおぶってあげるよ」
「そ、そんなの…!」
流石にそれは恥ずかしいと言うかなんと言うか…
「いいから」
有無を言わさない強い口調だ。小さくても男の子なんだな、と思った。
しぶしぶ身をその小さな背に預けると、ショーンは立ち上がり歩きだす。
「大丈夫?重くない?」
「全然、イビー軽すぎるよ」
まぁそうだろう。
病弱なせいなのだろうが、軽いといわれて悪い気はしなかった。
「僕の方こそ仕事終わった後だから、汗臭いかも…ゴメンね」
「そんな事無い」
そっけなく言う。確かに少し汗の匂いがしたが、嫌ではなかった。
―ここに、生きている事が感じられるような匂い。
「ついたよ」
家の前につき、ゆっくりと降ろされる。少し、残念な気がした。
「じゃあ僕は行くよ」
「今日は本当にありがとう」
口から素直な気持ちが出る。
「ぁ…」
「何?」
イビーの表情が驚きの形をとっていた。
「いやさ、初めてイビーの笑顔見たよ。…笑ってる方が可愛いと思うよ。じゃ、じゃあね!」
照れてしまったのか、ショーンは駆け足で去っていく。
「……私、笑ってたんだ」
多分、それがこの町に来て他人に見せる初めての笑顔だった―

終わり
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