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私の思い(ノラ) 

今日は前回のノラ編です。
ちょっと、暗いかな。
では、どうぞ~。
窓から部屋の中に入り込んでくる光は少し薄暗く、降り注ぐ雨の音が聞こえてくる。
このように雨が降っていては、いつもどおり外で接客が出来ない。
私は小さく息を吐くと窓の傍から離れ、仕事に戻った。
「ノラ、少し調理場の片付けをして欲しいんだけど」
「は~い」
叔父のピルアスさんが、話しかけてくる。
言われた通りに調理場へと向かった。

私はこの村で、叔父と2人で旅館を営業している。
両親は私が小さい頃に死んでしまった。私の為に旅から戻ってきて、養ってくれた叔父には本当に感謝している。
儲けはそんなに多くは無い、それでも2人で生きていく分程度は十分に稼げた―



「…ん」
少しぼうっとしていたようだ、集中しよう。
「よし!」
声を出し体中に力を入れ、手を動かし始めた。


その日は雨のせいか、客が来なかった。
掃除や足りなかった物の買出し―雑用だけで仕事が終わる。
(まったく…休みって欲しい時に来なくて、別に欲しくないときに来るんだから)
心の中で愚痴を漏らし、自分の部屋のベッドに座り込む。
何もする事がない…寝てしまおうか、と思いぼんやり窓の外を眺めると、
「あ、雨上がったんだ…」
相変わらず空は薄暗いものの、降り落ちていた雨は、いつの間にか止んでいた。
「……」
明るさだけが取り柄(だと自分では思ってる)の私も、こんな日はたまに元気が無くなる。
―あそこへ行こうか。
そう思い、作業着のままだった私は着替えて、上にローブを羽織り外に出た。


あそこ―墓地にはまったく人がいない。
元々人がいないような場所だし、さっきまで雨が降っていたから当然と言えば当然か。
好都合だ、正直、今の自分の顔は暗い表情を浮かべているだろうから…
思考を巡らせつつ目標の『物』を目指し、歩く。
墓地の中心部分にそれはあった。
寄り添うように並ぶ二つの墓標―私の両親だ。
建てられてから、大分時間が経っているので、少し傷や汚れが目立つ。
「…」
それらを目の前にしても、別に涙などは出て来ない―そんなものは、とうの昔に流し尽くした…
『あの時』の私が、ディリスさんのようなヒーラーだったならば、そう考える事もしばしばある。
だが、本当は分かっているのだ、そんな事をどれ程考えようと意味は無い、と。
今の私が両親の為に出来る事などたかが知れていた。
「…―」
いつもどおりに少し悲しい旋律を、口から紡いでいく。
墓地に来て歌う事は、私の中で既に習慣のような物になっていた。
日も落ち、更に暗くなった墓地に私の声だけが響く。
―奏でる音は、あの人達に届いているだろうか?
日常では余り考えないようにしている両親に想いを馳せ、私は暫く歌い続けた…


翌日になると空は青く、澄み渡っていた。
だが、私の気持ちは『昨日』を引きずり少し暗いままだ…
(切り替えなきゃ)
そう思うが、上手く笑顔を浮かべられない。
その考えが更に自分を追い込み、どんどんと思考は悪い方へ―
「あ、ノラさんこんなところで奇遇ですネ」
と、俯いていた所で誰かから声をかけられる。
顔を上げると、どこか引きつった笑みを浮かべた青年が立っていた。
声の主は、雑貨屋の主人マルコムさんだ。
マルコムさんは何故か分からないが、用も無いのによく旅館に遊びにきていた。
気持ちを抑え込み、無理やり笑顔を浮かべて対応する。
「ん?マルコムさん久しぶり~」
「あ、あの…」
「なんですか?」
何かを言いよどんでいるようだった。返事を待っていると、
「くっ…ずっと……ずっと前から好きでした!」
なんて事を言い、花束を渡してきた。
「え…そうだったんですか…ありがとうございます」
成る程、旅館が好きだったから、いつも来ていたのね…
「そんなに旅館が好きだったなんて…この花束飾っておきますね」
「……はい」
どこかしらマルコムさんが落ち込んでいるようなのは、気のせいだろうか?
―だがその美しい花束を見ていると、いつの間にか曇っていた心はすっかり晴れていた。
「とても嬉しいです♪」
気持ちを伝え、その美しい花束を飾るために旅館へと入る。
(ありがとう、マルコムさん…)
今日は良い1日になりそうだった。


おわりん
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