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90パーセント(小説)(ファーガス) 

90パーセント・・・
エイレンは嫌いだけど、ファーガスは失敗しても、許しちゃう>w<
というわけで、今日の話はファーガスです。

「ほっほ、今日もいい天気だな」
空を見上げて呟いた。
空は青く、ラデカの光が地に向かって降り注いでる。
わしの名はファーガス。ティルコネイルで鍛冶屋を営んでいる。
この近くには鍛冶屋はここしかないので客は結構きていた。
自分で言うのもなんだが、わしは鍛冶師としては底辺のほうだと思う。
だからうちの店の売りは「安さ」「速さ」である。
使い捨ての武器の修理などによく用いられる事が多かった。
巷(ちまた)では曖昧な確立の事を俺の武器修理成功率にならって『ファーガス率』などと呼ばれているらしい。
そんな事もあるせいか下手なくせに割とわしの名前は知られている。
「………」
脂汗が1筋額から流れ落ちる、素直に喜んでいいか微妙であった。
ま、まぁ客が増えるのは良いことだ。気を取り直して今日も1日頑張ろう。



その日もファーガスにとって普通の1日―のはずであった。その瞬間までは…
その男は夕方にやってきた。長身に均整のとれた筋肉を持ち、体中に傷がある。
燃える夕日を背に、真っ直ぐこちらに歩いてくる。
目に浮かぶは決意の炎、正に夕日に相応しい男であった。
わしでもわかるくらいのオーラを放っている。
(なんだ…この男は)
まさか殺し屋か何かであろうか…わしの武器修理に腹を立てた誰かが刺客を送ってきたのかもしれない。
手には斧を持ち、引きずっている。
あれで叩き切られたらひとたまりもないだろう。
自分の一生を振り返る…長いようですごく短かい人生であった。
悔やまれる事があるとすれば、もう少し鍛冶の腕を上げたかった。
「……」
その「夕日を背負った男」が目の前に立つ。じっとこちらを見つめてくる。
「あんた…いや、何も言うまい。せめて痛く無いように1発で殺ってくれ…」
そう言い、わしは目を閉じた。死後の世界ってあるのだろうか、そう考える。
そうして『その』瞬間を待ち受ける。
…………
だがいつまでたっても自分に死は訪れなかった。
「……?」
「…武器修理をして欲しいのだが」
「…へっ?」
目を見開くと男は手に持っていた斧をずい、とこちらに差し出している。
見るとその斧は刃こぼれがかなり酷く、もう修理しないとまともに使えない状態だ。
しかしこれほどの気迫を持って、修理に望む者は初めてだ。
「そ、そうか修理に来たのか…で、どれだけ修理するんだ?」
「全部、だ」
「…ふむ。……っ!……あんた…正気か?」
受け取った斧を見ても、祝福がかかってない。
教会で配られている祝福ポーションを武器にかけると、武器を修理する確率が格段にあがるのだ。
大抵どんな冒険者も武器を修理する時は、祝福ポーションをかけて修理を望むものだが…
「祝福がかかってないが…本当にいいのか?」
「あぁ」
「わしが誰だか分かってるのか?」
「あぁ、修理率がものすごく低いと噂のファーガスだ」
「………」
他人の口から言われると割とショックであった。
しかし…なるほど男の目の中の決意の意味はこういう事だったのか。
「では…作業にとりかかる…」
「うむ、頼む」
こちらも本気で仕事に取り掛からなければならないようだ。
未だかつてこれほど本気になった事は無いかもしれない…
今のわしなら完全に修理できるかもしれない…!
(やってやる…!)



「…出来た……!」
修理は終わった。斧を見る―完璧であった。
祝福がかかってない状態でここまで完璧に修理できた事は初めてだ。
あの『夕日の男』もきっと満足するはずだ…!
外に出て男の元へ向かう。
「ほれ、出来たぞ。完璧だ…あんたには感謝するよ。無くしていた自信を少し取り戻せた」
「確かに、完璧だ……」
その男は呟いく。だが、その顔に浮かぶのは落胆の色であった。
「……また……来る…」
「あ、あぁ」
少し肩を落として男は去っていく。
どういう事かさっぱり分からなかった。わしには完璧に見えた修理も何かが足りなかったかも知れない。
「鍛冶は奥が深いな……」
息と共に声を吐き出す。
あの男はまた来る、と言っていた。その過程で気づく事があるかもしれない。
次こそは満足させてみよう、そう思った。



それから例の『夕日の男』は何回もぼろぼろの斧を持って尋ねてきた。
そのうち何回も失敗してしまった事もあった。
何かを学ぼうとするが、結局何も理解できない。
男はいつも真剣で、話す内にだんだんと親しくもなっていった。
なんとか彼の望みを叶えてやりたい、そう思い始めた矢先にその事件は起こった。



「やぁ、ファーガス」
「おぉ、あんたか。…また斧、か」
「うむ、頼む」
「もう何も言うまい…確かに引き受けたぞ」
既に日常になりつつあったその作業を始める。
その斧の修理にはかなり慣れてきたので気を抜いていたのかもしれない。
修理中にとんでもないミスを犯してしまった。
修理前より酷い状態、つまり完全失敗だ。斧の刃の部分はもう使い物にもならない。
しかもこれ以上修理しても無駄だ…原型を留めていないのだから。
(…ついにやってしまった)
自分の愚かさを呪った。
男に修理代と斧の原価分の金を払おう…。
「スマン、お前さんの斧の修理、全部失敗してしまった…」
「な、なんだって!?」
男の顔が驚愕の一色になる。それはそうだ、全部失敗するなんて鍛冶師としてありえないミスだ。
「謝って済む問題ではない事は十分に承知しておる…だからその分の金を―」
「いや、よくやった!ありがとう!」
「え、えぇ?」
男はその風体に似合わず飛び跳ねて喜んだ。訳が分からない…いったいどうなってる?
がっしりと両腕を掴まれる。
「なぁファーガス。俺たち【友達】だよな!?」
「…そ、そうだなあんたとわしはもう友達みたいなもんかもしれん」
「うんうん【ファーガスの友達】…いい響きだ。皆に自慢できる」
「そ、そうか?」
少し照れる―わしってもしかして人気あるのか?
その後男は満面の笑顔を浮かべ、手を振りながら帰って行った。
結局最後まで意味不明だったが【友達】が出来た事は素直に喜べる。
言葉では理解できない何かがあの男との間にあるような気がした。


おわり
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