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変わる、こと(小説)(アランウェン) 

今日は、アランウェンのはなし。
では、どうぞ~~~。

刃が空気を断つ音が震える―
ダンバートンにある学校の庭で一人の女性が剣を振っていた。
重鎧に身を固め、長く編みこんだ銀髪を後ろに垂らしている。
「ふぅ…」
息を吐き、剣を下ろす。
彼女―アランウェンは普段ここで生徒達に剣術や弓術を教えている。
だがその日はインボリックであり彼女の仕事場である学校は休みだ。
それでも彼女はこうして自主的に剣修練をしていた。
元イメンマハパラディン部隊の時からやっている事だ。
もう癖と言っても過言ではない。
休憩を取るために階段の段差に腰掛けた。
懐からタオルを取り出し、汗をぬぐう。
ふと町の風景を見渡す、休みの日とあってダンバートンはいつもより、更に活気付いていた。
こういう瞬間に前とは違うのだな、と思う。
目を瞑り、少し昔の事を考える―



―少し、昔の話―


「ぐぅっ!」
魔族が放った魔法の矢がアランウェンを貫く。
鎧に対魔法のコーティングを施してあるが、威力の全ては殺しきれない。
『ガァァアッ!』
すぐさまに魔族が次の詠唱を始める。だが―
「―っ!」
それよりも早く体勢を立て直したアランウェンが、両手持ちの大剣を敵の胴体に突き刺した。
それきり敵は沈黙する。彼女の周りは血の海であった。魔族と自軍の死体がそこら中に転がっている。
イメンマハでのパラディン部隊修練過程を終了したとたん、戦場に駆り立てられた。
近くにあるルンダダンジョンから、魔族の軍勢が攻めてきたのだ。
『ギリ…』歯軋りを鳴らす。既にアランウェンの部隊は隊長を含め全滅していた。
残ったのは彼女一人である。
(許さない―)
剣の指導をしてくれた先輩、苦楽を共にした同僚の記憶がよぎる――皆死んでしまった。
敵の死体から剣を引き抜く。
戦場の様子を見ると、どうも敵の部隊は後退を始めているらしい。
「……」
このままにはしておけない。そう思い、様々な者の血で濡れた体を引きずって敵部隊を追おうとするが、
「待て!」
後ろから強く呼び止められた。振り向くと薄い色素の髪を風に揺らす一人の騎士が立っている。
別部隊の者だろうか…
「撤退の命令が下った、もう敵を追わなくていい」
その男はそう言った。彼もアランウェンと同じく体中を血で濡らしていた。
―激戦を潜り抜けてきたのだろう。しかし、彼の言うことは聞けない。
「…私は仲間の仇を討つ。貴方は撤退しろ!」
そうアランウェンは言い、先に進もうとする。
だが、駆け寄ってきた男に腕を掴まれる。振り払おうとするが、彼女にはその程度の力さえも残っていなかった。
「離せっ!あいつらだけは許さない…私が、私が仇を…!」
「そんなボロボロの体で何が出来るんだ!」
強く言い返される。自分でももう戦いを続けられるようなコンディションじゃ無いことは分かっていた。
だが、そんな事死んだ者の苦痛に比べれば―
「お前がやろうとしているのは敵討ちなんかじゃない!ただの犬死だ!」
「……」
悔しいが何も言い返せなかった。
今の自分には敵一人をも殺す力すら残っていないだろう。
黙っていると、腕を引っ張られ連れて行かれる。
「…一人で歩ける」
そう訴えるが、男は腕を離さなかった。アランウェンはだんだんと目の前が暗くなって行くのを感じていた。
意識が途切れる前に聞いておこう―
「…貴方の名は何だ?」
「リダイア、だ」
その言葉を聞いて、アランウェンは意識を失った。



瞑っていた目を開ける。彼と出会った時の事を思い出していた。
あの出会いから色々あったが結局彼と決別する事に決めたのだ。
そのため自分は変わることを望み、ダンバートンに来た。
完全に変わったつもりだが、気づくと彼の事を考えている。
「はぁ…」
普段は絶対漏らさないようなため息を吐く。
(もしかしたら私は彼に会いたいんじゃないのか?)
自分に問うが、当然誰も答えてはくれない。
「変わる、ことか…」
そう呟いてアランウェンは立ち上がり、修練に戻っていった。


おわり
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