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形見(小説)(エヴァン) 

今回の形見は、エヴァンのはなしです。
ノベルページは、二人で鉱山(後編)を追加しました。
では、どうぞ。
晴れた空の下、ブロンドの髪が風に乗っている。
さらさら流れる髪をかきあげ、空を仰いだ。
(良い天気ね…)
彼女の名はエヴァン、官庁で冒険者ギルドの受付を担当している。
モンスタークエストやギルドストーンの販売、冒険者の紛失物回収などが主な仕事だ。


今日もダンバートンは賑わっていた。すぐ近くに見える広場では所狭しと露店が並んでいる。
いつもは官庁を訪れる者が後を立たないのだが今日はめずらしく訪問者が少なかった。
まぁ、たまにはこういう日があってもいいだろう―そう思う。
目を彷徨わせ、広場の喧騒を眺める。売り手と買い手の声が響きあっていた。


その日の正午に一人の少女が尋ねてきた。歳は…13歳ぐらいだろうか。
金髪に赤い装備を身に纏い、背中に弓を背負っている。
最近ではこのような幼い冒険者も珍しくなくなった。
エヴァンはいつも通り対応する。
「冒険者組合へようこそ。どういったご用件でしょうか?」
「あ、あの…落し物をしたみたいなんです」
少女は何やら焦っている風であった。
「紛失物の回収依頼ですね。何を無くされたのですか?」
「腕輪なんですけど・・・」
「いつ頃無くされたか分かりますか?」
「昨日です。ラビダンジョンに入ってる時に倒れちゃって…
どうもその時落としたみたいなんです…」
よくある事だ。ダンジョン中はふと気を抜くとモンスターにやられてしまう。
その時にでも落としたのであろう。
「そうですか。料金を支払っていただく事によってこちらの方でアイテムを探索、回収しにいきますがどうしますか?」
「あ、お願いします!いくらですか?」
必死さが伝わってくる。大事な物なのだろうか。
「5万ゴールドです」
「え…そんなに高いんですか?」
少女の顔が落胆の色に染まっていく。
「あ、あのっ、無くした腕輪母の形見なんです!
お金はいつか払うのでどうにかしてくださいませんか!?」
少女はエヴァンの腕を掴み詰め寄ってくる。焦っていた理由はわかった。が、
「…そう言われましてもこちらも料金を払って貰わなければ回収しにいけません。
どうかお金を作ってからもう1度来て下さい。」
こちらも仕事でやっているのだ。個人の感情で物事を勝手に決められない。
「そんな…いつなくなるか分からないのに…」
エヴァンは敢えて少女のされるがままになっていた。
見ると少女の目に涙が浮かんでいた―しかし私にはそれをどうする事も出来ない。
少女は声を涙に濡らしながらも落ちつきを取り戻し、エヴァンから手を離す。
「ごめんなさい…取り乱してしまいました…」
「いえ、気にしないで下さい」
少女は目を腕でこすりながら下がった。
「私なるべく早くお金貯めます!」
「そうですか…分かりました。またおこし下さい」
見送る中、少女は喧騒の中に消えていった。
仕方ない―そうエヴァンは思うが胸の中に不快感が残る。
「……親の形見、か」
そう呟き、スカートの中から一つの指輪を取り出す。
今は亡き父がエヴァンに残してくれた唯一の物であった。
(そんな…いつなくなるか分からないのに…)
少女の言葉が頭の中に響く。
「………」
エヴァンはぎゅっとその指輪を握った。


その日の夜、エヴァンは官庁の回収役の仕事をしている兵士を尋ねた。
「どうされたのですか?エヴァンさん」
「えぇ…一つ回収して欲しい者があるんだけど、いいかしら?」
「かまいませんが。依頼者の名前と預かっているゴールドを渡して貰えますか?」
「依頼者は私、お金はこれよ―」


1週間後、例の女の子がまた尋ねてきた。
体中に擦り傷を作り、包帯を巻いている場所もある。
少女はゴールドの入った袋をエヴァンに差し出し、
「お金集めました。すぐ探してください!」
息も荒くエヴァンにそう言う。1週間で集めるとはエヴァンも思ってなかった。
―それだけ少女の思いが強かったのであろう。
エヴァンはゴールドの入った袋を受け取り、答える。
「はい、受理しました。ではこれを…」
「…えっ」
少女の顔が驚愕の形になる。エヴァンが例の腕輪を取り出したからである。
「そんな、どうして…お金を払ってから探すんじゃ…」
「官庁の回収部隊は優秀ですね。1瞬で見つけてくるなんて。」
エヴァンは珍しく笑顔を浮かべ、少女に語りかける。
「…!」
少女は何かに気づいたらしくエヴァンを見つめる。
「エヴァンさん…ありがとうございます…」
「私は依頼を受理しただけです。お礼を言われる事などなにもしていません。」
言葉は事務的だが口調は柔らかく、どこかしら暖かかった。
それから少女は何度も頭を下げ、最後には満面の笑みを浮かべ去っていった。
「ふふ…」
自然と口から声が出る。
「今日もいい天気ね」
そう言ってエヴァンは1週間前と同じく空を見上げたのだった。


おわり

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