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ハングリー(小説)(シモン) 

今回のブログのほうの小説は、ハングリーです。
フキのとうは、もう4回ぐらいハングリータイトル取れてますww
では、どうぞ。
ダンバートン衣料品店の店主、シモンはいつも通りふらふらと奇妙な動きをしながら店を経営していた。
長い顔に、狭い肩幅、青白い顔をしており、身に着けている衣装やアクセサリーはとても派手だ。
口から出る言葉は自信に満ちており、自分の技術は王国一だと謳っている。
一人称は『アタシ』であり女のような口調でしゃべるが、れっきとした男である。
言動と動きは変だが腕は確かであったので、訪れる者は多かった。
「シモンさーん、この服のほつれ直して欲しいんだけど…」
「そう、アタシに出来ない事はないわ、任せておきなさい。」
訪問者が彼に服を渡すと見る間にほつれがなくなっていった。
「ほら、直ったわ。流石アタシね。まぁ、この程度の服で失敗なんてありえないけどね。」
「ありがとー。これお代ね。」
直した服を早速、試着室で身に着けた訪問者は、シモンに礼を言いながら去っていった。
「なにかあったら、またいらっしゃい。」
そんな感じでシモンの一日は過ぎていく。



ある日の午後、シモンがオーダーされた服を作っていると、衣料品店のドアが開き、『ドタンッ』と言う音と共に、少年が店に倒れこんできた。
「っ!…なに…?」
「きゅぅ~…」
店の床にうつ伏せになっている少年の身なりは、ひどいものであった。
冒険者に最初に支給されるという初心者服はぼろぼろであり、荷物も何も持ってない。
いや、一応腰に木の棒をぶら下げているか…
シモンは彼に近づき、
「…死んでるの?」
つま先で少年の頭をこつこつとつついた。
するとつつく度に『う…う…』と唸っている。
「生きてるのね…」
少しほっとした。こんな所で朽ち果てられても困る。
シモンは頬をぽりぽりとかきながら少年の近くに行き、しゃがみ込む。
「ほら、しゃべれるならなんとか言いなさい。」
「あ……た…た…」
「…アタタ?」
頭の中に一瞬『お前はもう死んでいる』というセリフが浮かんだがすぐ消える。
「何言ってるかわかんないわよ。」
「…た、食べ物くだ…さい…」
「……」
店の中に『ぐぎゅ~』という少年の情けない腹の音が鳴り響いた。



シモンが店の奥から食べ物と飲み物を持ってきてやると、少年はすごい勢いでそれらを口に入れ始めた。
号泣し、『生きてて良かった、生きてて良かった』と連呼しながら食べている様は、はたから見ると面白い。
シモンは笑うのを我慢していた。
そうする内に少年は食べ終わり、立ち上がる。
「助かりました、本当にありがとうございます!」
ぺこぺこと頭を下げてお礼を言ってきた。そしてこうなるまでのいきさつを語り始める。
「いやー、この世界に来たのは良いんだけどネズミすら倒せなくて…」
てへへと笑っていた…ネズミすら倒せないとは…ある意味すごい。
「それでお金は勿論食料すら手に入れられなくて…
誰かに助けてもらおうと思って入ったのが…」
「この店、だったという訳ね。」
「はい。」
なるほど、それならこのみすぼらしい格好にも納得がいく。
少年は『はわー』とか言いながら店の中を見渡していた。
『この世界』と訳のわからない事を言っていたが、きっとどこか田舎からでもやってきたのだろう。
それにしても―
「……」
「な、なんですか…」
シモンはじぃっと少年を見つめた。
ぼろぼろの初心者服を見ているとこう、なにか自分の中の美的感覚がこのままではいけないと訴えかけてくる。
このシモンがこんな身なりの者を放っておけるだろうか。いや、おけない。
「あなた、脱ぎなさい!」
「…えぇっ!?ぬ、脱ぐのでスか!でも男ですよ僕!」
少年は衝撃から声が裏返っていた。
「…何を勘違いしているの…服を直してあげるって言ってるのよ。」
「あ、あぁ!そうですか。いや~本当色々助かります。」
「アタシの美的感覚がそれを許さないのよ、その間にシャワーでも浴びてなさい。」
「はい、わかりました~」
「終わったらベッドを貸してあげるからそこで寝なさい。」
「…至れり尽くせりだ…」
またぼろぼろと泣き出す。まぁ、感謝されて悪い気にはならない。
シモンは少年を奥の脱衣場まで連れて行ってやった。
少年が浴室に入るのを待ってぼろぼろになった服を回収し、代わりの服―パジャマを置いておく。
(さぁ、アタシの力みせてあげるわ)
そうしてシモンは作業に取り掛かった。



チュン―チュン―
スズメの鳴き声が聞こえる早朝に少年はうっすらと目を覚ました。
「そう言えば、昨日は…」
ぽつりとつぶやく。
あの後少年は疲れきった体を引きずってベッドに入った後、すぐに寝てしまったのだ。
左の壁を見ると新品と変わらないような…むしろどこか普通の初心者服と違い、デザインが光る物となっていた。
少年は感動し、シモンに礼を言おうとしてベッドを抜け出そうとする。
そこでベッドの横に何か違和感がある事に気づいた。
恐る恐る布団をめくって見ると…
「……GYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
「何よ、うるさいわね。」
ベッドにはなんとシモンが入っていた。少年は叫び、どたばたとベッドから這い出す。
「なななな、なんで一緒にベッドに入ってるんデすかっ!?」
「アタシのベッドだもの、当然でしょ。」
「う、うぅ。」
少年は呻き、ふらふらとその場を歩いた挙句、いそいそとシモンの繕ってくれた服に着替え始めた。
着替え終わり、ふぅ、と息をつく。
「…な、なにもしてませんよね。」
脂汗を浮かべた笑顔で少年がシモンに聞くと、
「昨日は…激しかったわ…」
「くぁwせdrftgyふじこlp;」
少年は訳のわからない事を叫び、ドアをあけて出て行った。
「まったく…冗談の通じない子ねぇ。」
フフ、と笑う。シモンは自分が冗談の通じるような相手ではないと自覚していないのだ。
「ま、あれだけ元気なら大丈夫でしょ。」
そう言って、シモンは開店の準備に取り掛かり始めた。



終わり
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