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大切なもの(小説)(グリニス) 

すいません。ちょっと凍ってました…。
今日は、大切なものをUP。
では、どうぞ。


「いらっしゃいませー!」
この店が1番混むのは今の時間帯、正午のあたりだ。ふくよかな体型をした中年女性が客の対応に追われていた。彼女の名前はグリニスと言う。
ダンバートン食料品店の女主人である。
グリニスの店には様々な食材や調味料、更には完成された料理なども売っており、純粋に食事をしに来る人の他にも料理人を目指す人が訪れているせいもあり、中々に繁盛していた。
グリニスは軽食が得意であり、周りにも好評なので昼時に一気に客が増えるのだ。
「またおこし下さい。」
大変ではあったがその顔には仕事に対する充実感が浮かんでいた。




3時頃―ちょうど混んでいた客が空き始めた頃1人の軽鎧を身に着けた青年が訪れてきた。
少し疲れた表情を浮かべ、グリニスの店の前に腰を下ろした。
「腹減った~。おばさん、ライスとローストベーコン頼むよ。」
「あら、あんたかい。どこかのダンジョンにでもいってたのかい?」
その青年は店の常連であり、殆ど毎日のようにここで食事をしている。
「まぁ、ね。この前少し大きい買い物してさ、ダンジョンでも行って金稼がなきゃ生活できないよ…」
「そうかい… ほら出来たよ、お食べ。」
話している内に作り終わったグリニスは青年に料理を差し出す。
「おぉ!」
青年は喜び、ガツガツと料理を食べ始めた。
こうも美味しそうに食べられると料理人としても中々嬉しい。
「やっぱいつ食っても美味いな~…これがお袋の味なのかな。」
「何言ってるんだよ、母親にご飯作ってもらった事ないのかい?」
「いやぁ…俺小さい頃に母を亡くしていてね。殆ど覚えてないんだ。」
青年は少し弱々しい表情を作りそう言った。
「…そうなのかい。」
(あたしと母親を重ねているのかねぇ…)
そう考えたが、別に悪い気はしない。むしろ中々に心地よくさえも感じた。
「はは、少し空気がしんみりしちまったな。おばさんありがとう、美味しかったよ」
青年は食べ終わり、立ち上がって会計を済まそうする。
「今日は特別サービスでただにしといてあげるよ。」
グリニスの口からそんな言葉が出ていた。たまにはこういう事があっても良いと思うのだ。
「え、いいのか?」
「あぁ、いいよ。ただ他の人にはあんまり言うんじゃないよ、皆にただで食べさせたら店がつぶれてしまうからね。」
いたずらっぽい笑顔でそう言った。
「ありがとう! また来るよ!」
青年は嬉しそうに去っていく。グリニスは暖かい気持ちで仕事を再開し始めた。
しかし、その日を境にして青年は店を訪ねてこなくなった――




例の日から1ヶ月ほどたったある日、官庁で働いているエヴァンがグリニスの店に訪れてきた。
「すみません」
「あら、エヴァンさんじゃないですか。どうしたんですか。」
エヴァンは手に小さな袋を持っている。あれはなんであろう…?
「実は先日ラビダンジョンで一人の冒険者の遺体が発見されたのですが…」
「………」
よくある事だ。ダンジョンは宝などが手に入るが、それと同時に様々な危険が伴う。
しかし、グリニスはなんとなく感じていた。その冒険者というのはもしかして…
「遺体の荷物を整理していた時こんな物が見つかりまして。」
エヴァンは手に持っていた小さな袋をこちらに差し出してきた。
袋を開け、中身を見てみると小さなカードとネックレスが入っていた。
カードには『いつもありがとう、グリニスおばさん』と書かれている。
「多分グリニスさんへのプレゼントだと思います。受け取ってくれますか。」
エヴァンはそう言い、こちらの返事を聞いてきた。
「わかりました…これは受けとっておきます。」
エヴァンは少し詳しい事情を話していき去っていった。
「………」
グリニスは無言で料理を作り始めた。作る料理はローストベーコンだ。
料理が出来上がり、グリニスはネックレスを身につけた。
自分の料理を食べる。ネックレスを通じて青年にこの味が伝わればいいのだが―そう思う。
「まったく…勝手にこんな物残して逝ってしまうなんて…親不幸な『息子』だよ…」
グリニスには景色がにじんで見えた。その日、彼女は店を休業にし、青年を弔ったのだった。


終わり
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